暮れにタムナス兄しゃんが来たの。
ワタチは兄しゃんがこの世にいる事はすっかり忘れていたから、狼が来たかも知れないとおもって、二階の、タアちゃんの洋服がぶら下がっている所に隠れたけど、直ぐに父ちゃんに見付かって引きずり出された。 それでも、ワタチは賢こいから直ぐに兄しゃんを思い出して、いい子いい子をしてもらった。
父ちゃんと兄しゃんとタアちゃんはズーっとカラオケをしていた。ワタチはカラオケを聴くと眠くなる。
兄しゃんは歌が上手だ。 タアちゃんに言わせりゃプロ級かも知れないけど・・・タアちゃんはこの頃の歌番組に出て来る余りにも下手な爺ちゃん婆ちゃんの歌手にウンザリしてたのよ・・・兄しゃんの歌は速い歌が多いから、ネンネの態勢に入っているワタチでも、目がパッチリしてしまう。
タアちゃんはどうしても歌が遅れ勝ちになるけど、ワタチはそれが気に入っていて、直ぐに眠れる。
父ちゃんはまだ、時々行進曲になってしまうけど、聞きなれた声だから眠れる。
タムナス兄しゃんはタアちゃんの「何ちゃって御節」とお雑煮を食べて、歌を歌って、二日に帰って行った。
兄しゃんの会社はロケットスタートだって。 働かされ盛りは大変よね。
タアちゃんは、いつまでもカラオケ操作をするゲーム機みたいなもので遊んでいる。 世間の日常が始まっても、タアちゃんの頭はズーっとお正月だからスタートしない。